あっという間に年末がやって来ました。本当に月日の経つのは早いですね。
さて、12月と言えば、クリスマス・パーティーやら忘年会といった集まりで、お酒を飲む機会も増える時期。年が明ければ、新年会もあります。楽しい機会に水を差すつもりではありませんが、是非、お酒の飲み過ぎには注意して下さいね。というのも、先日、「飲酒と認知症」というテーマで、専門の研究をされている方のお話を聞く機会に出会いました。この研究者によると、最近報告された英国での研究*1では、1週間に7単位(英国の基準で、純アルコール量が56g)以上の飲酒をする人は、7単位より少ない飲酒量の人に比べると、脳の灰白質(大脳皮質や小脳皮質)の全容量が少ないということが分かったそうです。簡単にいうと、例えば、缶ビールを1日に1缶(350mlのビールには約14gの純アルコールが含まれます)飲んでも、1週間で98gのアルコールを摂ったことになり、脳の灰白質の容量が減る可能性がある、ということです。そして、同じ研究によると、毎日短時間で大量のアルコールを摂取する人は、そうでない人に比べて、顕著に脳の灰白質の全容量が少ないということが分かりました。(余談になりますが、この短時間で大量の飲酒をすることを、英語でbinge drinkingと言います。)また、脳の灰白質の容量と、飲酒するアルコールの種類との関係は、ビールでもワインでも蒸留酒でも、特に差がなかったそうです。やはり、純アルコール量が大切となってくるようです。勿論、アルコールと認知症の関係については、今後も様々な研究が必要な分野だと思います。私の著書でも、アルコールは、45歳~65歳での認知症の危険因子の一つであるということを紹介させて頂きました。現在ランセット*2で推奨している基準は、英国の単位を使って週に21単位(純アルコール量168g)以下のアルコール摂取です。でももし、上記の研究結果が、人種や文化の違いに関係なく当てはまるとしたら、今後、認知症予防に推奨されるアルコール量の基準は、もっと少なくなるかもしれません。日本では、最近、厚生労働省で検討会を設け「飲酒ガイドライン」の案をまとめた*3と聞いています。日本でも、この純アルコール量を使って飲酒量を把握する動きとなるようです。また、その中で、生活習慣病になるリスクを減らすためには、目安として、1日当たりの純アルコール摂取量は男性 40g以下、女性 20g以下を挙げています。
因みに、純アルコール量の計算の仕方は以下のようになります。
摂取量(ml) × アルコール濃度(度数/100)× 0.8(アルコール比重)
例: ビール 500ml(アルコール5%)の場合の純アルコール量は、
500(ml) × 0.05 × 0.8 = 20(g)
私は、残念ながら(!?)体内でアルコールを分解する酵素が少ない体質で、お酒を飲むと、顔が真っ赤になって具合が悪くなります。ということで、お酒は一滴も飲みません。しかし、中には、ワインボトルを1個空けても、全然平気だ、という方もいらっしゃるかと思います。このように、飲酒に関しては、個人差も大きいかと思います。そして、ご自分の身体は、ご自分が一番よく知っている筈です。どうぞ、今後の身体・認知面・心の健康のために、ご自身にとって適切なアルコール量を考えながら、お酒を楽しんで下さい!
*1 Topiwala, A., Ebmeier, K. P., Maullin-Sapey, T., & Nichols, T. E. (2022). Alcohol consumption and MRI markers of brain structure and function: Cohort study of 25,378 UK Biobank participants. NeuroImage. Clinical, 35, 103066. https://doi.org/10.1016/j.nicl.2022.103066
*2 Livingston G, Huntley J, Sommerlad A, Ames D, Ballard C, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet, 2020;396:413-446. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)3036-6
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