今年初のブログは、ペットと認知症についてです。まずは、昨年10月に発表された日本の研究から。これは東京都健康長寿医療センターによる、大田区に在住する65歳以上の方を対象とした研究です*1。参加者11194人(平均年齢74.2歳、女性51.5%、既婚者67.1%)のうち、調査時(2016年)に犬を飼っていた方は、959人(8.6%)、猫を飼っていた方は704人(6.3%)でした。またその内の124人が、犬猫の両方を飼っていました。そして、およそ4年間に渡って、これらの参加者を追跡調査し、2020年までの認知症発症率を調べたわけです。結果は?というと、犬を飼っていた方は、飼っていない方に比べて、40%も認知症になるリスクが低かったそうです。また、この参加者の運動習慣と社会的孤立の有無も調べ、犬を飼っている人のうち、運動習慣がある人、社会的に孤立していない人は、認知症の発症リスクが有意義に低かったということです。また、残念ながら、猫を飼っている人では、同様の効果は見られなかったそうです。この研究者は、犬の世話をするということから、飼い主が日常的に運動し社会的参加を維持でき、その結果、飼い主の認知症予防に繋がっているのではないか、と結論づけています。
2つ目の研究は、昨年の12月に発表された英国からの報告で、50歳以上の地域住民からなる集団を対象とした長期追跡研究データを基にしています*2。その中から7945人(平均年齢66.3歳、女性56%、白人97.5%)が選ばれ、2010年から隔年で2019年まで、言語記憶能力とその流暢性が検査されました。この参加者のうち、35.1%に当たる2791人が何かしらのペットを飼っており、26.9%に当たる2139人が独居生活者でした。そして、結果はどうだったかというと、ペットを飼っている人の中で、独居生活者は、誰かと一緒に暮らしている人に比べて、言語記憶力と流暢性の低下が緩やかだったそうです。ペットを飼っていない独居生活者は、ペットを飼い誰かと一緒に暮らしている人に比べて、上記の能力の低下が速かったということです。この研究者は、この結果から、独居生活をされる高齢者には、ペットを飼うことが認知面には有益かもしれないと、結論づけています。
この二つの研究は、それぞれ条件は違いますが、ペットの飼育が認知面に影響するのか、ということを調べた点では、とても興味深いですね。勿論、最初の研究は日本人の高齢者を対象にしていますので、より参考になるのではないかと思いますが、英国の研究結果も考慮すると、独居の高齢者には、猫では無く(!)犬を飼うことが、認知症予防になるかもしれませんね。猫好きの方、悪しからず!!
*1 Taniguchi, Y., Seino, S., Ikeuchi, T., Hata, T., Shinkai, S., Kitamura, A., & Fujiwara, Y. (2023). Protective effects of dog ownership against the onset of disabling dementia in older community-dwelling Japanese: A longitudinal study. Preventive medicine reports, 36, 102465. https://doi.org/10.1016/j.pmedr.2023.102465
(日本語のプレスリリースはこちらです)
*2 Li Y, Wang W, Zhu L, et al. Pet Ownership, Living Alone, and Cognitive Decline Among Adults 50 Years and Older. JAMA Netw Open. 2023;6(12):e2349241. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.49241
Comments