ご存知のように、日本は世界でも数少ない、国民皆保険、介護保険の制度がある国です。しかし、私が暮らすアメリカには、残念ながら国民皆保険制度はありません。公的な保険制度には、65歳以上の高齢者と障がい者が受給できるメディケア(Medicare)と、低所得者を対象としたメディケイド(Medicaid)の2つがあります。因みにメディケイドは州によって違いがあります。これらの制度の対象とならない人は、勤務先が加入する民間の医療保険に入ることが多いです。補足ですが、オバマ前大統領が頑張って推し進めた「オバマケア」によって、従業員が50人以上の企業は、医療保険を提供しなければならない、となったものの、50人以下の企業には義務はなく、実際、保険の無い人が多くいらっしゃいます。2020年の調査によると、アメリカの人口の8.6%に当たる2千8百万人が、保険に加入していなかったということです*1。しかも、医療費の高さは驚くばかりです。私が以前勤務していた民間の病院では、例えば、保険が適用されない場合、入院費が1日で$2000($1を120円とすると24万円)以上かかりました。私の個人的な経験ですが、睡眠時の無呼吸症候群の検査を受けた時の費用も$2000でした。運よく、加入していた保険でほとんどカバーされましたが、ビックリな額です。また、公的保険の長期入所施設の費用への適用は、条件に合った低所得者のみ対象となります。勿論、その場合は入所できる施設も限られます。それ以外の方は、個人で介護保険に加入するか、全額負担するかです。因みに、2022年のアメリカにおける介護保険料は、何らかの持病のある65歳なら平均して年間で、男性$1700(約20万4千円)、女性$2700(約32万4千円)です*2。女性は男性より長生きの傾向にあるので、女性の方が、保険料が高いということです。アメリカの療養施設は、2021年時の全国平均が、月額で$7908(約94万8千960円)、個室なら$9034(約108万4千80円)という数字です*3。もう10年ちかく前の話ですが、サンフランシスコ市内にあった私が勤めていたアルツハイマーの入所施設は、公的な保険は適用できない施設で、その当時で月額が約$8000(約96万円)でした。そして、そこには10年以上も入所している方もいらっしゃいました。保険料にしても10年以上も払い続けるのは、決して安いことではありません。そしてもしも、全額負担なら、恐ろしい額です。ご家族が、一体いくらの金額を払っていたのか、怖くて想像もできません!アメリカで、何も心配なくそれなりの長期施設に入ることの出来る高齢者は、結局、お金に余裕のある層ということになってしまいます。日本は超高齢社会ということで、医療費の負担が大きな課題ではありますが、この介護保険制度というのは、なくてはならない制度ではないかと思います。アメリカの個人主義と州政府で法律や制度が違うということを考えた時、40歳以上の人たち皆で保険料を払って、高齢者や特定疾患のある方をサポートしていこうという介護保険は、日本人の国民性を反映しているように思うのは、私だけでしょうか…。
*2 全米長期介護保険協会
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