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  • kateoya

ブログ#2 この認知症薬が、世界の希望の光になるのか!?

更新日:2023年5月16日

この3月に、米国食品医薬品局(FDA)は、アルツハイマー病(AD)の治療薬として レカネマブ (Lecanemab)の完全な承認(Full Approval)への申請を受理しました。レカネマブは、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の方を対象としており、アミロイド・ベータをターゲットにしたアルツハイマーの新薬です。現時点でレカネマブは、FDAの迅速承認(Accelarated Approval)という形で、承認を受けています。一般的には、この迅速承認を受けた後も、製薬会社は、研究を続けてその薬の効果を証明するか、そうで無い場合は、迅速承認を辞退する、ということになります。レカネマブの18ヶ月間渡る最終的な臨床第Ⅲ相検証試験では、レカネマブを投与したグループは、プラセボのグループに比べ、認知面、機能面での低下が減少したという結果でした。この結果を提示し、FDAから完全な承認を受ける、というのが今回の申請の目的です。

日本においては、今年1月26日に厚生労働省より優先審査に指定されました。レカネマブを開発するエーザイは、 今年の9月までに日本で承認される事を目指しているとのことです。また、EUや中国での承認も視野に入っているということです。

私の著書「親子で防ぐ認知症」のコラムでも書かせて頂きましたが、レカネマブと同様にエーザイとアメリカのバイオジェンが開発したアルツハイマーの治療薬「アデュカヌマブ」は、アメリカでは迅速承認されましたが、日本やEUでは、その安全性や効果を疑問視し、承認されませんでした。日本でも、引き続き、慎重な審査が行われることを願うとともに、このレカネマブが、待ちに待ったアルツハイマーの治療薬となることを願います。

また、アメリカでは、このタイプの治療薬は現段階において、公的保険制度ではカバーしないということになっています。もし日本で承認されれば、何としても保険が適用される事が必要となります。エーザイは、アメリカでの年間の価格をおよそ日本円で約350万円と見積もっています。そうです、350万円です! 保険でカバーされなければ、ほんの一握りの方にしか手に入らない、虚しい薬となってしまいます。


参考資料

1. van Dyck CH, Swanson CJ, Aisen P, et al. Lecanemab in early Alzheimer’s disease. N Engl J Med. 2023;388(1):9-21. doi:10.1056/NEJMoa2212948

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